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第3回WEATHER MARKETING SUMMITレポート③~コンテクストとマーケティング~

2023年最後となるブログは、先日開催された第3回Weather Marketing Summitでの高広伯彦さんによる基調講演『コンテクストとマーケティング〜マーケターが触れないものをどうマーケティングに活かすのか?』の内容をご紹介しながら、来たるべき2024年のマーケティング戦略について考えていきたいと思います。

高広伯彦氏

コンテクストとは何だろう?

「JAVAという言葉から何を連想しますか?」高広さんの講演はこの問いかけから始まりました。

  • 開発

  • 紅茶

  • ジャワ島…

などなど、会場からは、様々な答えが出てきました。

これは、同じ言葉や表現でも、人によってそれらを定義づける背景や状況(=コンテクスト)が異なるために起こることであり、自分が伝えたいことを正確に理解/解釈してもらいたければ、「コンテクスト」を考慮したコミュニケーションが必要だということを意味しています。

私たちが理解しておくべき「コンテクスト」には、以下のようなものがあります。

  1. 会話の文脈/言葉の使用(上述のJAVAに対する解釈の違いなど)

  2. 文化的なコンテクスト(国や業界・組織による文化の違いなど)

  3. 歴史的コンテクスト(時代による違いなど)

  4. 個人的なコンテクスト(一人ひとりの違い)

  5. 社会・環境的コンテクスト(天気や自然現象・社会経済状況など個人や人間が変えられないもの)

マーケティングにおけるコンテクスト

こうしたコンテクストの理解は、マーケティング活動を行う上でも、とても重要です。

なぜなら、ブランドや商品・サービスが、人々にとって、どういう意味や価値を持つのかを決めるのもコンテクストだからです。「JAVA」という言葉の例でもわかるように、ある言葉が、どのように解釈されるかを、発話者が一方的に決めることはできないのです。そして、高広さんからは、コンテクストを踏まえたマーケティンを実践する方法として、”Context Marketing”と、”Contextual Marketing”という2つのアプローチについてお話を頂きました。

”Context Marketing”と”Contextual Marketing” スライド画像

Context Marketingについて

Context Marketingとは、顧客のコンテクストを考慮した上で、パーソナライズされた体験を提供し、エンゲージメントを高めるための「戦略的」なアプローチです。例えば、自分達の商品やサービスが、ある「天気」の中でどういう意味を持つのかを考えた上で広告・コミュニケーションのあり方を考えるのも、その一つです。

マーケターが考慮しておくべきコンテクストには、以下のようなものがあります。

  1. 現在の顧客の状況(利用するデバイスや閲覧しているサイトやアプリなど)

  2. 顧客の行動履歴

  3. 個々の顧客の特性(年齢・性別・職業などの人口統計学的情報)

  4. 外部環境(天気や季節、地域のイベントなど)

インターネット広告を運用する方ならおわかりになると思いますが、(1)〜(3)については、多くの広告媒体において、広告配信の対象となる「オーディエンス」として設定が可能です。一方、(4)にある「天気」や「季節」といった外部環境に関するコンテクストを踏まえたオーディエンス設定をサポートするのが弊社のツールとなります。

実際、弊社では、このようなスライドを用いて、弊社のツールは「媒体側で行うオーディエンス設定に天気という味付けを加えてもらうためのものである」といったご説明・ご提案をしています。

資料:気象データで「動的」なオーディエンス設定を実現

Contextual Marketingについて

一方、Contextual Marketingとは、Context Marketingという「戦略」を実施するための「戦術的」なアプローチであり、端的には、特定のコンテクストや状況にもとづいて、広告やマーケティングメッセージをターゲットに合わせる手法などがこれにあたります。状況に応じて広告のメッセージやクリエイティブが自動的に変わる「ダイナミッククリエイティブ」などもその一つです。

Marketing 6.0とイマーシブマーケティング

高広さんからは、12月に刊行されたフィリップ・コトラー氏の新著『Marketing 6.0』のメインテーマであるイマーシブ(没入型)なマーケティングが意味するものや、そこでのコンテクスト理解の重要性についても解説を頂きました。

Marketing 6.0 表紙画像

(リンク: https://amzn.to/3RAtuEE

本書には”The future is immersive.”という副題がつけられていますが、これは、デジタル空間におけるデータに加えて、物理空間でのデータもすべて統合された中に消費者が入っていく世界を指している、と高広さんは言います。

今日、私たちの周りには膨大な数の広告や情報が溢れています。こうした中で、自分達が発するメッセージに注意を向けてもらうためには、デジタル空間・物理空間におけるあらゆるデータを統合的に把握した上で、人々が置かれたコンテクスト・状況に対して「関連性」の高いコミュニケーションを行うことが重要になります。

心理学においても、人々は流れてくる情報を無意識のうちに取捨選択していると言われています。

  • 選択的注意→騒がしい中でも自分の興味関心に合致しそうな話は聞き分けることができる(カクテルパーティ効果)

  • 選択的歪曲→良し悪しの判断は好き・嫌いといった先入観に左右される

  • 選択的記憶→興味関心に合った情報ほど記憶に残る

でもご紹介した通り、お天気が売上に直接影響を与える訳ではない商品やサービスでも、天気による人々の気持ちや行動の変化に合わせて広告のクリエイティブを切り替えるだけで、広告のクリック率が30%以上改善するといった効果が確認されています。

より良い広告体験の実現に向けて

新たな技術の普及により、データの統合的な利活用は加速していくと思われますが、データや生成AIを「ターゲティング」のためではなく、「正しいコンテクスト理解にもとづく関連性の高いコミュニケーション」のために使うことができれば、より良い広告体験の実現につながるだろう、という結びの言葉で、高広さんの講演は終わりました。

スライド資料:コンテクストを活用したマーケティングで最も重要なのは関連性

GoogleもChromeにおけるサードパーティCookieの完全無効化に舵を切るなど、2024年は本格的なポストクッキー時代が始まる年になりそうですが、マーケターにとっては、より良い広告体験の創造に向けて、知恵や技術、そして覚悟が問われる1年にもなりそうです。

私たちルグランも、天気による人々の気持ちや行動の変化に着目した気象連動型広告配信ツールを中心に、インターネット広告、デジタルサイネージ、CRMなど様々な領域において、新たな広告体験の創造にチャレンジしていきたいと思います。

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