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Google に天気は予報できるのか?

人工知能の開発を行う Google DeepMind の研究者が先週サイエンス誌に発表した「機械学習による天気予報」に関する論文がちょっと話題になっています。 機械学習による地球規模の中期天気予報について

大気の状態のイメージ

Google による天気予報の取り組みに触れる前に、まずは現在の天気予報を支える数値予報モデル(NWP: numerical weather prediction)について簡単に説明します。

これは現在あるいは将来の大気の状態を以下のような「物理法則」に照らし、どのような天気になるかを予測するもので、「因果関係」にもとづく予報ともいえるでしょう。

<数値予報モデルで用いられる物理法則> 力学過程: 気圧の差違や地球の自転によって風が吹く仕組など 物理過程: 温度や湿度から空気の対流や雲が形成される仕組など

これに対して、今回の Google DeepMind の論文が注目されているのは、過去の気象データをそのまま機械学習にかけることで、「なぜそのような気象状態になるのか」がわからなくても、短時間に、かつ簡易に、天気予報ができる可能性を示したという点にあります。

これは、過去(の天気)の延長線上に未来(の天気)があるという「相関関係」にもとづく予測であり、一定の条件下(※)では数値予報モデルを凌ぐ精度も実現できています。とはいえ、論文の最後でも述べられている通り、機械学習による予報が、物理法則にもとづく数値予報モデルに取って替わる訳ではありません。 (※)例えば、予報の範囲は緯度経度で 0.25 度以上とされているので、日本付近だと約 23km 四方くらいのエリアに対する予報になります。

先日、気象庁で天気予報の実務に携わる方とお話をする機会があり、「近年の地球温暖化は天気予報の精度にどういう影響与えるのか?」という質問をしたところ、地球温暖化によって大気の状態は変化するかもしれないが、そこにあてはめる「物理法則」は変わらないので、相応に正確な予報はできるだろう、という回答がありました。

一方、地球上で起きている全ての大気現象を物理法則で説明できる訳ではないので、今後、機械学習による予報も併用することで、限られた情報、限られた時間・予算の中でも、相応に精度の高い予報ができる可能性を示したという点で、この Googleの取組は注目に値するといえるでしょう。

ここまで読んで、広告・マーケティングの世界とも共通点が多いと感じられた方も多いのではないでしょうか?

過去の閲覧・行動履歴や、広告の配信結果を機械学習にかけることで、商品・サービスのレコメンドや広告配信を最適化するといったことは広く行われています。これは過去のデータから未来を予測するという点で、Google の天気予報とも類似した手法・アプローチといえます。

一方で、コロナ禍で消費者の行動が大きく変化した結果、過去の行動履歴にもとづく将来予測が難しくなるケースもあります。また、いつもはビールを良く飲む人でも、気温が下がると日本酒を熱燗で飲みたくなったりするように、私たちの行動が、常に過去の延長線上にあるとは限りません。また、来年からいよいよ本格化するサードパーティクッキーの利用制限によって、過去の行動履歴データ自体の取得・利用も難しくなっていくでしょう。

こうした状況においては、一人ひとりがおかれた状況(=コンテクスト)を理解した上で、そうした状況で人々の気持ちや行動がどう変化するのかを考えてコミュニケーションを行うことが大切です。これは、大気の状態から物理法則にもとづいて天気を予測する数値予報モデルにも共通するアプローチです。

例えば、アルコール飲料の消費が多いという「過去の行動履歴」から予想される行動と、気温が下がると暖かいものが飲みたくなるという「コンテクスト」の理解を組み合わせることで、普段は「キリっと冷えたビール」をお勧めする一方、気温が下がった日には「日本酒の熱燗」を提案したり、「暖かいお鍋のお供にビール」というコミュニケーションを行ったりすることが可能になる訳です。

温かいお鍋のお供にビールのイメージ
気象連動型広告バナー制作用オリジナルGPTで作成

さて、ルグランでは、来たる 12 月 12 日(火)に、コロナによる中断をはさみ、4 年ぶり、第 3 回目となる Weather Marketing Summit を開催しますが、今回のテーマはまさにこの「コンテクスト」の理解です。

基調講演は、『次世代コミュニケーション・プランニング』の著者であり、社会構想大学院大学の特任教授としてマーケティングやコミュニケーション戦略について教鞭を執る傍ら、企業のマーケティング活動を支援する高広伯彦さんをお迎えし、「コンテクストとマーケティング〜マーケターが ”触れない” ものをどうマーケティングに活かすのか?」というテーマでお話を頂きます。

後半は、株式会社ヒット(屋外デジタルサイネージ広告)、株式会社アイセイ薬局(インストアサイネージ広告)、株式会社ジオロジック(ジオターゲティング広告)という媒体社の方々と「エリアマーケティング広告」におけるコンテクストの理解・把握の重要性や、気象データ活用の可能性についてディスカッションをします。

いよいよ来年から本格化するサードパーティークッキーの利用制限を前に、どうすればより良い広告体験を提供できるのか、その中で、気象データはどのような役割を果たせるのかを考えて頂く機会をご提供できればと考えておりますので、ぜひご参加ください。

お申込みはこちらから→ ●日付:2023 年 12 月 12 日(火) ●時間:15:30〜18:00(開場 15:00) ●場所:札の辻スクエア(東京都港区芝 5-26-4)     JR 田町駅三田口・都営地下鉄三田駅 A3 出口より徒歩 4 分 ●費用:無料 ●主催:株式会社ルグラン


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